今回は当院での審美修復についてお伝えします。

前歯の治療は単純に見えるところなので審美的な領域の治療となり審美修復となりますが、前歯と奥歯は形が違うのが分かるでしょうか。

前歯はスコップのような形をしています。これは顎を動かして運動させたときに奥歯を守るための形になっています。

ですので前歯の被せ物を作製する場合は審美的な要件と、機能的な要件両方を満たす必要がありよりシビアに状態を診断する必要があります。

今回のこの方は50代の男性の方です。『前歯が折れた。』ということでご来院頂きました。

なぜこうなったのでしょうか。

前歯の折れた断面を確認してみると断面の真ん中にオレンジの材料が見えます。根管治療を行うと根の中に入っている神経や血管を取っていく必要があります。取った後そのままにしてしまうと細菌の繁殖するスペースになってしまうため材料で埋める必要があるので根管治療後はこのような材料が入ることになります。

この歯は以前根管治療をされており、おそらく根管治療が必要になった原因はむし歯でそのむし歯を埋めるために樹脂の材料が入っていました。そうなると元々の自分の歯が少なくなってしまいします。

また上の前歯は下の前歯に下から突き上げられる咬み合わせになっていますので力がかかり折れたものと考えられます。

さらに今回の場合は下の前歯がガタガタしており特に今回折れてしまったところの向かい合う下の前歯が前に出ています。周囲の歯よりもこの前歯によってより強い力がかかりこの歯が折れてしまっているのです。

この環境下に何も考えずにセラミック入れるときれいにはなるかもしれませんが人工物ですので何年か経つと同じように折れたりするかもしれません。

ですのでこの方にお話ししたベストプランは下顎前歯の部分矯正でガタガタを矯正し、その後上の前歯の被せ物を入れるプランですとお伝えしました。

矯正治療まではと言われましたので少し上の前歯が前に出るかもしれませんが下のがたがたに合わせて上の前歯の裏側の斜面を調整する事で上の前歯の治療を行うことで了承を頂けました。実際にはどれくらい前に出していく必要があるか確認するため仮歯を入れ、それで審美面、機能面が問題ない事を確認し最終的なセラミックの被せ物に移行しました。

患者様には最終的には前歯を少し前に出したことは何も違和感ないとおっしゃっていただけ大変こちらも嬉しく治療が終えられました。

前歯は見える範囲の治療になるためきれいにと審美面に目が行きがちですが実は機能面にも非常に密接にかかわっているためシビアに治療のステップを進めていく必要があります。その分患者様に笑顔になって頂けたときは大変うれしくこちらもやりがいがあります。